~この記事は2012年、現地インターンをされていた、秋塲 優歩さんによって当時書かれたものです。~
1年でいちばん暑い4月、カンボジアにお正月がやってきました。
カンボジアには3回「お正月」があります。
・1月のインターナショナル・ニューイヤー、
・2月の中国旧正月(カンボジアには華僑がとても多いのです)、
・そして4月のクメール正月。
1月、2月の正月は世界各国がお祭り騒ぎでも、クメール人にとってはいつもと変わらない普通の日。4月のクメール正月が一番盛り上がるんだとか。
●「元旦」は夜7時
日本では1月1日の午前0時にお正月を迎えますが、カンボジアのお正月は年によって異なるそうで、今年は4月13日の午後7時11分でした。4月13日は仏陀の生まれた日とされているそうです。
日本語教室の生徒が言うことには、この時間に「天使」がやってくるんだとか。(仏教で「天使」とは何ともしっくりこないのですが…)。
この「天使」をお迎えするために、お供えをします。お線香(見た目は花火)、フルーツやお菓子、ジュースでテーブルを囲み、その中央に鏡、櫛、香水、白い粉を置きます。
各家庭で少しずつ違うので、見比べてみるのも楽しいです。
午後7時11分にお線香に火を点け、みんなでお祈りをしました。ハウスキーパーのマウちゃん(独身)に何をお願いしたのか尋ねたところ、「素敵な男性とめぐり合えますようにって」と、大笑いしながら話してくれました。
●村のお正月
お正月は、都市に出稼ぎに来ている人のほとんどが故郷に帰省するので、首都のプノンペンなどは農村部よりも人が少なく、静まり返っているとのこと。
そして、村の様子はと言えば、どんちゃん騒ぎ(笑)。
お正月は14日~16日の「お正月休み」と「お正月休みのための休み」があるので、20日間近く仕事がお休みになるところもあるんだとか。4月に入るとみんなそわそわしだします。
●お正月の過ごし方
村人のお正月の過ごし方は、食べて、遊ぶ。これに尽きます。
村では各家庭で食事会があると、通りすがりの人に食べていきなさいよと食事を振舞ってくれたりします。夜ともなれば、そのままダンスパーティーに突入して、夜中まで飲んで踊って…なんてこともしばしば。
食事の席に呼ばれれば、到着早々、「チョール・チュナム・トメイ(あけましておめでとう)」と言って、顔中に白い粉を塗られます。真っ白な顔になって、みんなで乾杯するんです。
お寺も敷地を開放して、まるでダンスホールのように爆音でダンスミュージックをかけ、一日中老若男女が踊って騒ぎます。三箇日の最後の日には、お寺に集まった村人たちが水を掛け合う、という粋なイベントもあります。
サングラスにデニムシャツとデニムパンツという流行りの格好をしたおにーちゃんたちも、ちょっと露出多めでおしゃれをしたおねーちゃんたちも、みんな頭から水をかぶってびっしゃびしゃになりながら踊っていました。
若者は、「コップ・タック」という遊びに興じます。
この遊び、走ってきたバイクや車に水を入れた小さな袋を投げるというもの。元々は両親や祖父母に正月くらいはゆっくりしてもらおうと、子どもたちが自分で水浴びをしたり、両親・祖父母の水浴びを手伝ったりしたのが始まり。それが今や通行人に水を引っ掛ける若者の遊びへと発展したわけです。
実は、これが原因で深刻な交通事故も発生しており、現在はコップ・タックはしないようにと首相自ら呼びかけるような事態にもなっているそうです…。
私も友達とバイクで走っていたら、子どもたちには水の入った袋を投げつけられ、二十歳前後の若いお兄ちゃんたちには、キンキンに冷えた水をバケツに3杯、頭から浴びせられました(笑)。
多くの人が生まれた土地に戻り、家族と過ごし、隣近所で食事を楽しみ、村全体で盛り上がる。タイとの国境沿いにあるこの小さな村には、どこを見てもあたたかい笑顔があふれていました。
日中の気温が40℃を超えることもあるこの季節。
独特の風習をもつ1年に1度の大イベント、クメール正月が過ぎ、カンボジアはこれから本格的に雨期に入ります。
2012年4月18日
現地インターン 秋塲
コメント